その妖、危険につき


私はどうにか廉から視線を逸らした。


「…来ない、と思う」

連絡すらほとんどない。私も向こうも、事務連絡以外で、電話したこともない。


「ふうん。じゃあ、俺がここにいたって問題ないってことだな」

廉は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、立ち上がってソファに移動した。



廉はたぶんわかっている。わかった、と言ったほうがいいのかもしれない。ここに一人で私が暮らす意味。

残酷にそれを訊ね、慰めることも、突き放すこともしない。ただ事実として、受け止めている。
< 42 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop