その妖、危険につき
その優しさ、涙のもとにつき
「どうして、ひなたはそうやって嘘をつくの?」
「違う。嘘じゃないよ。あそこに、いるんだよ。お姉さんが苦しいって泣いてるんだよ」
「いいかげんにしなさい!」
ぴしゃりとお母さんに怒られた。
「お母さん」
「そんな嘘をつく子になんでなっちゃったの」
お母さんの目にはもう、気持ち悪いものを見る眼差ししかなくなっていた。
「気持ち悪い、あなたみたいな子」
お母さんは侮蔑を含んだ瞳で私を睨み、それから背を向けて離れていこうとする。
「お母さん、行かないで!」
私は叫んだ。幼い手をお母さんに伸ばしても、届くわけもなかった。