その妖、危険につき
「貸せ、自分でやる」

傷口を見て固まる私を見て、彼は救急箱を奪うように取って自分で消毒やら包帯やらをし始めた。


「あんまりじろじろ見んじゃねえよ」

彼は私のことなんて少しも見ずに辛辣な言葉を放った。


明るいところで見ると、彼の容姿が整っていることがわかった。漆黒の瞳と髪。端正な顔立ちとバランスの取れた体躯。男の人に見惚れるなんてほとんどないけど、本当に目を奪われるくらい美しいという言葉が似合った。


「あ、私、向こうに行ってますね。何かあったら、呼んでください」

私は彼から視線を逸らし、キッチンへと離れた。
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