その妖、危険につき
「もちろん。頼りにしてる」

オレンジジュースを飲んで真奈に向かって笑うと、真奈はまんざらでもないように笑った。


「ちょっと、トイレ行ってくるね」

真奈が席を立った。途端に苦しくなる。右側の席にいたカップルの背後にいた、生きてない女性にはずっと気づいていた。見るつもりもなかったのに目が合ってしまった瞬間、彼女は嬉しそうに笑って、すっと私の後ろに移動してしまったのだ。



真奈がいる間は気がまぎれるから良かった。だけど一人になると背後の重みが苦しい。彼女のマイナスの感情をもろに受け、気持ち悪い。

お願いだから、早く真奈に戻ってきてほしい。
< 50 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop