その妖、危険につき
下を向いてひたすら堪えていると、急にぽんと肩を叩かれた。とたんに、背中が楽になる。
「大丈夫?」
振り向くと、大学生くらいの男の人がいた。優しそうな顔立ちをしていた。
「ずいぶん敏感みたいだね。これは僕が責任もって連れてくから安心して」
彼女はいつの間にか彼の背後に移動していた。思わず彼女に視線をずらしてしまう。それに気づいたのか、彼はふっと笑った。
「あまり見えるって顔しちゃだめだよ。難しいのかもしれないけど、何も見えないふりをするといい。じゃないと、付け込まれることもあるから」