その妖、危険につき
「お前本当に敏感なんだな」

ソファに沈んだ私のもとへ、廉は水も持ってきてくれた。呆れたような目を私に向ける。



「好きでこんななわけじゃないもん」

「ああいうのには気をつけろよ。近づくな、目を合わせるな、見えるそぶりをするな。どうしようもなくなったら俺を呼べ」

ひどく一方的な物言いだったけど、最後の言葉に思わず目をぱちぱちさせた。


「廉を呼ぶの?」

「そうだっての。ごちそうに先にくたばられちゃたまんねえからな」

なぜだか、いつもの憎まれ口なのに、たまらなく優しく感じられた。どうしてだろう、泣きたくなる。
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