その妖、危険につき
「ごめん、驚かすつもりはなかったんだ」
おそるおそる振り返ると、若い男の人がいた。少し考えて、思いだした。
真奈と出かけたとき、私に憑いてしまった女の人を取ってくれた人だ。
「あ。あのときは、ありがとうございました」
「いや、気にしないで。今日は見ないふりができてて良かったって思って声をかけてしまったんだ。本当、驚かしてごめん」
「大丈夫です。ちょっとびっくりしたけど」
彼はふっと微笑んでから、ちらりと視線が動いた。
「それ、どうしたの?」
彼の指が勾玉に向けられた。彼の顔が曇って見えるのは、気のせいだろうか。
「えと、知合いにもらったんです。お守りにって」
「それ、しないほうがいいんじゃない?」
「でも、これしてから、変な目に合わなくなったし」