その妖、危険につき
彼の指摘が鋭くて戸惑う。でも、この勾玉は悪いものなんかじゃない。


「うん、普通の霊程度なら間違っても近づいてこないと思うよ。でも、それ自体かなり力を持ってる。禍々しいほどの」

この人は、きっと本当に力のある人なのだと思う。そういう専門家だと言っていたし。



だけど、この勾玉をはずしたくなかった。


「心配してくださってありがとうございます。でも、これは、大丈夫です」

きっぱりと言うと、彼は目を瞬かせた。


「大切な人にでも、もらったの?」

「ち、ちがいます。そんなんじゃありません」

どもりながら力いっぱい否定して、そんな反応をしてしまった自分に驚いた。顔が熱い。自分のことなのに、わけがわからない。
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