その妖、危険につき
「うーん、正直しないほうがいいと思うけど、当面はあまり心配ないだろうし。まあ、いいか」

彼は少し困ったように微笑む。


「じゃあ、何かあったらすぐ連絡して」

彼はポケットから出して、私に名刺を渡した。



「神宮寺貴臣(じんぐうじたかおみ)?」

「仰々しい名前でしょ? 僕の家系、陰陽師だから」

「そうなんですか…」

私の目と同じものを映す人であっても、私と共感できる境遇ではないらしい。


「だから僕は、こういうののプロだし、大学生でもあるから君とも年はそんなに離れてないよ。だから、どんな話だって聞くよ? 心の整理くらいなら、できるかもしれない」



彼の笑顔は優しくて、私を心配してくれているのがわかった。

私のような人間の抱える孤独や痛みを、彼は経験としてではなく知識として理解しているのかもしれない。
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