その妖、危険につき
――触らないで!
お母さんの私への拒絶がよみがえった。
「…何?」
問うた声が震えた。怖かった。
「今、近寄るな」
廉は全然ふざけていなかった。本気で近寄るなと言っている。じくじくと胸が痛む。
「……わかった」
涙腺がじりじりする。泣くところは見られたくない。私は廉に背を向けて、自然を装って冷蔵庫に食材を入れようと思った。キッチンでなら、きっと泣いたってばれない。
冷蔵庫に食材をしまい終えて冷蔵庫を閉めた瞬間、私に影ができて暗くなった。振り返ると、全然気配なんてなかったのに、廉が立っていた。