その妖、危険につき
「廉?」

私の思考が追いつかないうちに廉の手が伸びてきて、私の目もとを拭った。


「何で泣くんだよ…」

顔をしかめた廉の顔が近づいてきて、廉に初めて逢ったときのことがよみがえって体が動かなくなった。だけど廉はあのときとは違って、私の涙を拭うように唇を寄せただけだった。


「…廉も、私が気持ち悪いの? 触られたくないの?」

廉を見上げると、彼は眉根を寄せ、それから乱暴に腕を冷蔵庫に押し付けて、廉との間に私を閉じ込めた。私は驚いて肩をすくめた。


「お前、さっき誰に逢った? ろくでもないその気配のせいで、俺は今、ものすごく気持ちわりいんだよ。いつだったかも匂ったけど、それとは比べ物にならないくらいきつくな」

「ろくでもない気配?」

「霊能力者とか、そういうやつ。それをお前は勝手に勘違いしやがって。気が立ってるんだよ、俺は」
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