その妖、危険につき
その帰り道、危険につき
振り返っても、誰もいなかった。
誰かに見られている気がする。何度もそう思って背後を確認するのだけど、誰もいない。
その繰り返しだ。
気のせいかもしれない。だけど徐々に早足になって、ほとんど走ってマンションに入った。部屋に入るとすでに廉は帰ってきていた。
廉の姿に、ほっとする。
「どうした? そんな息きらして」
呆れたように、廉の顔がしかめられた。
「…なんか、誰かに見られてるような気がして。振り返っても誰もいないし、たぶん気のせいなんだろうけど、こわくて」
すっと廉の目が細められた。私をにらんでいるわけではないけど、それでも鋭い目にどきっとする。