その妖、危険につき
その帰り道、危険につき

振り返っても、誰もいなかった。

誰かに見られている気がする。何度もそう思って背後を確認するのだけど、誰もいない。

その繰り返しだ。


気のせいかもしれない。だけど徐々に早足になって、ほとんど走ってマンションに入った。部屋に入るとすでに廉は帰ってきていた。


廉の姿に、ほっとする。


「どうした? そんな息きらして」

呆れたように、廉の顔がしかめられた。



「…なんか、誰かに見られてるような気がして。振り返っても誰もいないし、たぶん気のせいなんだろうけど、こわくて」

すっと廉の目が細められた。私をにらんでいるわけではないけど、それでも鋭い目にどきっとする。
< 80 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop