その妖、危険につき


「った! な、何…?」

「マーキング」

言うなり、今度は生温かい感触が首筋を這う。私の体がびくんとはねた。


「俺のエサに手ぇ出されちゃあ困るからな」

にやり、と笑う廉の顔が近い。この男はどうして、無駄に色気を放っているのだろう。


廉のことを睨みつけると、小馬鹿にしたように小さく鼻で笑われる。それから、ふいに真剣な表情になる。



「気をつけろよ。ろくでもないにおいがする」

「ろくでもない…? でもあの人に会ってないよ」

「俺にとってじゃねえよ。あれはお前に害はないだろ。今日のはお前にとってろくでもない奴だ。俺、みたいなな」
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