その妖、危険につき
「廉、心配しすぎだよ。まだ真っ暗ってわけじゃないし」

「お前がつけられてたのだって、真っ暗なわけじゃなかったろうが。ったく、どんだけのんきなんだよ」


電話越しに聞こえてくる舌打ち。直接聞かなくてよかった。

こういうときの廉は、たぶんピリピリした気を放っていて、身動きがとれなくなるくらい怖い。



「とにかく一刻も早くとっとと周りに気を配りながら人通りのあるところを通って急いで帰れ」

一息に言う廉の言葉は要するに、急いで気をつけて帰れ、というそれだけだった。

不謹慎だけど、心配されていることは、嬉しい。


「わかりました。急いで帰ります」

私は顔がにやけるのを我慢しながら、神妙に答えて早足で歩き始めた。
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