好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

「せーちゃん、淳くんが迎えに来たわよお」


一階からママの弾む声が聞こえる。

私はコートを羽織って鏡の中の自分を見た。


眼の下のクマはコンシーラーでうまく消してある。


トタトタと階段をリズムよく降りるとママの幸せそうな笑顔が待ち構えていた。


「デートなの?」

「そういうわけじゃないけど」



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