好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕
医大のバス停に着くなり、私は逃げるように飛び降りた。

医大の立派な壁づたいに、左右に視線を動かしていると、本当に小さな、レンガ造りの喫茶店がオモチャのように置かれてあった。

看板には『シーズン』と手書きで書かれてあった。


「ここだ」


重たい木の扉をゆっくり開くと

からんころんのベルの音と

コーヒーのほろ苦い香りが心地よく私を出迎えた。


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