好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕
「コーヒーをどうぞ」
涙の染みを隠すように、そっとコーヒーが置かれた。
そのコーヒーの香りで、ふと私は我に返って
壊れそうな心を落ち着かせようと、ゆっくり椅子に腰掛けた。
「これは誰にも話したことはないんだけどね――」
見えないはずの光が、窓越しの景色を眺めるように目を細めた。
「ゆ、き…」
聞こえないくらいの声で、でも確かに、そう聞こえた―――