好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕
第7章 雪
「ゆき姉ちゃん」
美紀はそう呼んで慕っていた。
俺と同じ歳で、本当に雪のように白い肌に、滑らかな黒髪を凛と束ねた、日本美人といった感じの女性だった。
彼女は家は貧しかったが、
ものすごい才能を先生に認められて
庶民では通えない、ほんの一握りの身分の子どもが参加するピアノ教室に
特待生として授業料免除で参加していた。
俺は、その教室で彼女を見るなり一目惚れをして
大して好きでもないピアノ教室に通い続けていた。