好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

足取り軽く廊下を走る美紀の後ろ姿を見て

私はくらりと立ちくらみがした。


(あ、駄目だ)


私は顔を手で隠して、慌ててトイレに駆け込んだ。

トイレには知り合いの子が何人かいて話しかけられた気がしたが

そんなこと関係なく、個室に走りこんだ。


「聖里奈さん……気分でも悪いのかしら」

「もう授業始まる時間だけど……ほっといていいのかしら」

ひそひそと声がしたが、チャイムとともにしんと静まり返った。



「ふぇ………」


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