幸運の小さいおじさん
「ぷっ、おじさま、なんて呼べないよ不法侵入者に。あえて言うなら、おっさんは立派な犯罪者だ。そんな奴に、おじさまなんて言わないね、普通。」
おっさんは、うーんと腕を組んで
「じゃ、せめて、おじさんって呼びなさい。そして、ここから出してもらえないかな?」
うん、うん。と自分勝手に納得している小さいおっさん。
「ところで、おじさん。何してんの?僕の部屋で」
何者か知るためにも、是非答えてほしいもんだ。
「ああ、それは、まあ、なんだ・・・あれだな・・・」
必死に何かを隠そうとしてるようにも見えるけど。
何か言えない事情でもあるのだろうか?
汗たらたら。小さいけど、あの汗は親父臭そうだな、加齢臭するかな?なんて考えると可笑しくなった。
「ははは。別に言いたくなかったら言わなくてもいいよ。おじさん。」
「ん?そうか?・・・ん、そうだな。お前、なかなか良い奴だな。小さい頃は、もっと・・・」
しまった、という顔をしながら小さいおじさんは口を押さえた。
「小さい頃から僕を知ってるの?」
「ああ、いや、ま、そんなとこだ。」
小さいおじさんは、立ってるのも疲れたのか、胡坐をかいて座り込んだ。
「ところで、出してくれんかね?ここから」
「嫌だ。」
その一言を聞いて小さいおじさんは再び立ちあがって虫かごを叩いたり、よじ登ろうとしたり。
出せって叫んだり、あらゆる暴言を吐きまくって暴れた。
しばらくすると、疲れ切って、ぜえぜえと肩で息をしながらへたり込んだ。
僕は、幽霊やUFOとか摩訶不思議で証明できない現象、非科学的なものは信じないタイプだ。
だけど、今、現に小さいおじさんは目の前に存在しているんだ。
認めないわけにはいかない。
僕は、子供の頃、自分が見た事ない生き物を見つけた時の喜びを思い出した。