涙龍
3
―…あたしが向かう先はただ一つ
12番倉庫
じいちゃんが秘密に隠してた紙を、あたしは見たんだ
あたし、次期組長への挑戦状を
あたしは振り返らずに走った
「っ、」
「バイクに乗ってくればよかった」なんて、いまさらながら思った
「あと、ちょっと…」
倉庫が見えて「頑張ろう」と思ってラストスパートをかけたところで、バイクが目の前にとまった
「あっぶな!!」
「お嬢ーさん、迎えに来たよ~」
そう言ってヘラヘラ笑いながら煙草を吹かす藍色の髪をした彼
そんな彼の乗ったバイクが急に目の前に止まったから、ぶつかりそうになった
危うく、けがするところだ
“迎えに来た”
ずっと言われたかった言葉だけど、今は言われたくない言葉だ
「あたし、行かなきゃだめだから」