涙龍







―…あたしが向かう先はただ一つ


12番倉庫



じいちゃんが秘密に隠してた紙を、あたしは見たんだ





あたし、次期組長への挑戦状を





あたしは振り返らずに走った




「っ、」



「バイクに乗ってくればよかった」なんて、いまさらながら思った







「あと、ちょっと…」




倉庫が見えて「頑張ろう」と思ってラストスパートをかけたところで、バイクが目の前にとまった






「あっぶな!!」



「お嬢ーさん、迎えに来たよ~」





そう言ってヘラヘラ笑いながら煙草を吹かす藍色の髪をした彼






そんな彼の乗ったバイクが急に目の前に止まったから、ぶつかりそうになった



危うく、けがするところだ






“迎えに来た”






ずっと言われたかった言葉だけど、今は言われたくない言葉だ







「あたし、行かなきゃだめだから」






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