涙の海
「違う!私は魚よ!アクアガーデンに傷だらけで辿り着いた、アルバート、リック、フェイの友達の!」

「それが幻だと言うんだ!本当はお前も気付いているんだろう!?魚が人間に恋などするか!」

・・・確かに私は薄々感づいてはいた
アルバート達以外の住人のいないこと

夢の人間に抱いた感情の鮮明さ

何より、私は自分の姿を見たことがない

何の魚なのか
色は何色なのか
形は?大きさは?
ただ頭に傷を負っていることしか

それでも仲間達の温もりに甘えていた
このままでいいと思った

「私・・・人間なんだね?」

「ああ」

「ホントは夢の彼の恋人で・・・ホントはアルバート達なんて存在しなくて・・・」

「奴らはいるさ。お前の中にな。もちろん俺もな」

「目覚めないといけないんだね」

「あぁ、お前の仲間達はお前が傷つくのを嫌がり、出来るだけ側に置こうとしたがな。だが、奴らも悪気はなかった。目覚めさせなければいけないと思っていた。お前も、自分達もな」

「どうすれば目覚めるの?」

「この世界に別れを告げるんだ。つまり、魚のマリンは死ぬ」

「もう皆とは会えないよね?」

「いつでも会えるさ。俺達はお前自身だ。」

「うん、ありがとう。私、もう行かないと」

「あぁ、あの人間によろしくな」

「最後にあなたの正体を聞いていい?」

「・・・彼を愛する想いだ」




その言葉を最後に私はこの世界に別れを告げた






さよなら、みんな
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