涙の海
「いつもの夢のことね」

さすがは母代わりと言うべきか、すぐに悩みはばれてしまった
まぁ、隠すつもりもないが

「うん、また見たの。アルバートが言うには私の前世は人間なんじゃないかって」

私は今考えていたことを正直に話した
リックはまだ幼いので話さなかったが、フェイには頼ってしまう

「前世・・・、ならその夢の中の人間は恋人だったのかしら」

ふふっ、と笑いながら話すフェイ
フェイはどうやら人間を知っているようだった

「人間はよく私達クジラと遊ぶのよ」

その言葉に驚きを隠せなかった
そんなに近い場所にあの夢と同じ生き物がいたなんて
なら私の前世は、海で遊ぶのが好きな女の子で、魚に生まれ変わりたいと願ったのだろうか
・・・夢が叶ったのか

「とにかく、今日はもう寝なさい。もうすぐアクアガーデンも暗くなるわよ」

気付けば、海の青は赤く染まっていた
気付かないうちにかなり時間が経っていたようだ

「うん!ならもう寝るね!おやすみ!」

私はフェイに別れを告げるといつもの寝床まで泳いでいった


その夜、またあの人間が見つめている
寂しそうな優しい目
一時も離れることなく側にいる
私もなぜか心地よい気分になった
ふと、人間の目から水が出てきた
同時に寂しさを増し、ついには優しさも消えた寂しさだけの眼差しになった

目を覚ました私はとても胸が苦しくなるのを感じた
かわいそうだった
あの瞳がただただかわいそうで
次に会えたら笑顔くらい見せてあげよう・・・
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