涙の海
海蛇
今日は気分がすぐれない
あの夢の人間が気になる
きっと前世の私が、魚になった今でも彼を求めているのだろう
かわいそうな彼と前世の私・・・

寝床にしている洞窟で考え事をしているとリックが尋ねて来た

「た、た、た、大変だよー、マリン!」

彼はよく、こうして慌てて私のところに駆けてくる
カニなのでけして速くはないが・・・
そしてその騒ぎの内容はいつも彼が勘違いしたもので、たいていはたいしたことないのだが、暇を持て余している私にはいい冒険になる
こないだも

「大きな貝殻を見つけたよ!」

と言ってただの石ころだったり

「謎の物体が岩の影から出てるよ!」

と言ってお昼寝をしてるフェイのしっぽだったり
まったく、臆病でかわいい友達だ
今日はどんな面白い勘違いなのだろうと期待していると

「見たことない住人がいるよ!」

とのことだった
なんだか楽しそうだったので

「なら、見に行ってみましょう!」

と、二匹で見に行くことにした



リックがその住人を見たのは、アクアガーデンのはずれの方で、普段は滅多に近づかない場所だ
まぁ、まだ安全な海域なのでリックと二匹でも大丈夫だろう
しばらく行くと

「見て!あの洞窟の中だよ!」

リックがその身体のわりに大きなハサミを一つの洞窟に向けた
確かに、奥に気配を感じる

「ほ、ほんとに行くの?」

どうやらリックは怖がっているようで、今にも帰りたそうにしている
リックが話を持ってきたのになぁ・・・

「行ってみようよ。新しく来た住人ならあいさつしなくちゃ!」

私はリックを無理矢理ひっぱり洞窟に入っていった


洞窟の入口に着くやいなや

「よく来た。待っていたぞ」

と話かけられた

「待っていた?」

まるで最初から来るのが分かってたかのような口ぶりに私は疑問の声をあげた
ちなみにリックは最初の声のときに、すでに逃げ出している
・・・あとで脅かしてやる
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