涙の海
「マリン、お前と会うのを楽しみにしていたよ」

そう言うと奥から海蛇がぬっ、と出てきた
確かに見たことない顔だった

「何故私の名前を?」

当然の疑問だ
初めて会ったのに名前を知っている
それはつまり初めてじゃない訳で

「もしかして私の過去を知ってるの!?」

そうゆう疑問に繋がる
確かに、記憶を無くす前に会ったのなら私が知らなくても相手は知ってるかもしれない

「いや、初めて会うよ」

見事に推理は打ち砕かれた
そういえば名前もアクアガーデンに来てからつけられたのだった

「なら何故?」

もどかしくてしょうがなかった
先にアルバート達に会い、私の名前を聞きからかっているのかとも考えたが、アルバートやフェイはそんなことしない

「俺はお前で、お前は俺だ。まぁ、そのうち分かるさ。それより、最近夢で悩んでるんじゃないのか?」

意味の分からない言葉のあとに驚く言葉を聞かされた
名前どころか、今の悩みまで知っているとは

「何故そんなことまで!あなたは何者なの!?」

つい息を荒げてしまった
それほど意味不明な会話なのだ

「そのうち分かると言ったはずだ。それより、夢の話を詳しく教えてくれないか?」

私は少し戸惑いながらも、なぜか夢の話の全てを打ち明けていた

「お前はその夢の人間に会ってみたいか?」

「えぇ、でも魚だから無理ね。それに、前世の記憶と決まった訳じゃないから彼が実在するとは限らないし」

「そうか」

海蛇は妙に納得したように頷いた

「だが、もしこの先その人間に会いたくなったらまた俺を尋ねて来い。」

どうして?とゆう疑問が浮かんだが、彼は今話した限り意味不明な言動が多いので聞かないようにしておいた

「わかった。最後にあなたの名前は?」

海蛇は少し考えたあと

「ウェイクだ」

と、一言呟き奥に戻って行った
< 5 / 14 >

この作品をシェア

pagetop