青い空のかなた
ピアスの記憶
お金をはらい、コンビニを出る。
むっとする熱風が全身を包む。
クーラーで冷えた身体が熱をおび、いっきに汗が吹き出す。

「あっついなあー。」

アパートまでの10分間がやけに長く感じる。

ガチャ、ガチャ
「ただいまー。」

誰もいない部屋に向かって言う
鍵とコンビニの袋を無造作にほうり投げる。
部屋の窓を全開にして、空気を入れ換える。
冷蔵庫からお茶のペットボトルを出して、一気に飲み干す。汗で出た水分を補給する。

「ふー。生き返る〜。」

クーラーをつけ、窓を閉める。コンビニの袋からミートスパとぴあを取り出し、机の上に乗せる。 冷蔵庫から新しいお茶のペットボトルを取り出し、一口飲む。
机の上に置いてある小物入れを何気なく見る。
中に赤い花のピアスがコロンと転がっている。

(赤い、ルビーのピアス…)

9月ももう終わり頃、残暑はまだまだ厳しいけど、時折吹く心地よい風が秋を感じさせる。

いつもの金曜日。彼と食事を楽しんで、アパートまで送ってもらった時、

「明後日、誕生日だろ。どっか行くか。」
「いいの?日曜日だよ?」
「大丈夫。10時くらいに迎えに来るから、どこ行くか決めとけよ。」
「うん。わかった。楽しみにしてる。」
「おう。じゃ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」

アパートに入って、電気を点ける。顔が急に緩んでくる。

「お出かけだって−。誕生日覚えててくれたんだ−。」

意味もなくクルクル廻りながら、ベッドへバターン!とダイビング。

「どこ行こう。やっぱり水族館?遊園地かなぁ。昼間のデートって初めてだから迷っちゃうなあ。ねぇ、どこがいいと思う?」

何てぬいぐるみに話しかけたりして。
お風呂に入っている時もニヤニヤ顔が緩んでくる。
「フッフッフ。」

この込み上げる笑いは何だろう。
うれし笑い?
身体がムズムズして、踊り出したい気分。
ベッドに入っても
「どこにしよう。」
頭の中にいろんな妄想がグルグル。
考え過ぎて

「ね、眠れない。」

日曜日の朝
私は考え過ぎと興奮のし過ぎで完全に寝不足だった。
洗面所で顔を洗う。

「あ〜、目の下真っ黒。化粧で隠せるかな〜。」

いつもより念入りにメイクする。

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