夫婦ごっこ
「あの頃ってさ俺 めっちゃ傷ついてたんだ。
それまではなんとか我慢できたんだけど
いろいろあってかなり厳しくなって…んで
故郷へ戻って思い出巡りをしていたら たまたま
桃音ちゃんに声かけられてさ。」

「だからうちに来たんだ。」

「なんかさ おばさんたちから紅波のこと
聞いてたら…なんか心配になってさ
俺の教え子だからね。なんとか俺の言葉で
救えないかな~なんて 
だけど実際 あの時の紅波は
他人を寄せ付けないオーラーで…結局何も言えず
とりあえず携帯番号だけおいたんだ。
だから後で電話来た時は 驚いたよ。」


あの日 もう少しで犯されそうになったんだ。

「あんときさ 紅波何でもないって言ったけど
ほんとはそうじゃなかったんだろ?
ここにいても紅波はどんどん荒んでいくしか
先が見えなかったから…それをいいことに
契約結婚相手に紅波を選んだんだ。」


「救ってくれたと思ってるよ。
感謝はしてる。」


本当にそうだと思った。
あのままあそこにいたところで
絵にかいたような転落人生だったのは
見え見えだったから……。
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