夫婦ごっこ
「俺さ いっつも後悔すんだよな。
その時点で俺にとって何が大切なのかを
見逃してしまうんだ。
だからずっと後悔してきた。
こんなに辛いなら なんであの時もっと大切に
してやらなかったんだろう…。
手を離したんだろうって……。
今さら後悔したって遅いこともわかってんだ。」

恒くんの顔が本当に辛そうで
私は思わずその口を指でおさえた。

「私にできることある?」


その指を恒くんが優しく掴んだ。


  魔法にかけられたみたいに
  私はうっとりしていた。


「このままで…いいよ。
紅波は頑張ってくれて……充分だよ。」

「そう…よかった。」

「俺は……?」


  上手な嘘をついて……。

  私を見て……その人の次に愛してほしい…。



「私の居場所だけは確保しておいて。」


  そばにいたいの……。


恒くんは 笑うと
私を抱きしめた。

「紅波……可愛いよ…。」


もう恒くんの思うがまま…私は本当の意味の
雇われ妻……。
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