夫婦ごっこ
鍵が開いていた。

私が部屋に入ると 恒くんが新聞を読んでた。

声をかけるのがイヤだったから
そのままキッチンに向かった。

「どこか…行ってたのか?帰ってきたら
いなかったからさ。どうしたのかなって思った。」

「コンビニ行ってた。
眠れなかったから……。」

「ごめん。心配かけた。」

優しい声…出さないでよ……。

「一緒に住んでるんだからやっぱり心配するよ。
恒くん勝手すぎるよ。」

「そうだね。ごめん。」

素直に謝るな……。

「ずるいから……。そう言う時だけ素直に謝って…
いくら私が雇われてるからって…やっぱり心配するし…
何があったか考えるし……。」

「だよね。俺が逆なら 心配する。」

その素直さが腹が立つ。

「ずるい ずるいよ。
恒くんって…ほんと優しくない!!
私には…少なくてもここには恒くんしかいない…。
私だって…今日あったことはなしたり
料理をほめてもらったり…会話したいのに…
私より大事なことばっかり…大切にしてる。」


恒くんが立ちあがってバルコニーの窓から
外を見ている。

「ごめん…。だけど…どうしても………
ほっとけない……。泣くんだ……。」

恒くんがとうとう口を開く……
優しくない言葉をこれから喋ろうとしている。
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