夫婦ごっこ
「恒くんもお人よしなんだわ。
いいように利用されて結局 前さんを愛してるって
そう言われても甲斐甲斐しく千鶴さんの
思うがままに動くんだから。」


恒くんの手を振り払った。


「情けないね。恒くん。
女々しいよ。」

人の傷口をえぐってる私……。


「そうだな 女々しいよな。
わかってんだ。もう気持ちはここにはないことも…
千鶴はいつも本気だから…今は前しか見えてない事も。」

「恒くんはどうなりたいの?
前さんから奪って自分のものにしたいの?」

恒くんはワイシャツを脱いで上半身裸になった。

「俺は…千鶴が幸せならいい。
泣いてる千鶴を見るのが辛いんだ。俺が泣かせた分
幸せでいてほしい。」

私は思いっきり恒くんの背中を叩いた。


「偽善者。」


「は?」恒くんの顔が変わった。


「きれいごと言ってる。他の人のものを愛してるって
言う人が…そんなきれいごと言ってんじゃないわよ。」

心の中を吐きだしていた。
そして自分への怒りは…千鶴さんに…。
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