夫婦ごっこ
「この子ね デビューが決まったのよ。
孫なんですけどね…デビューしたら応援してね。」

お客から歓声。


  そうなんだ……。

私はその様子をどこか遠くから見ている気がした。

「ベニー…どうしたの?」

「あ…あ…おめでとうビオン!!」

ビオンはニコリともしないで私の顔を見ている。
私は視線をずらすために ソワソワしていた。


「もう何年も送り続けてて やっとなのよ。
ホントによかったわね。長生きはするものね~~。」

ミミちゃんはシワシワの目尻をもっと
シワシワにした。

「ミミちゃん 完全に決まるかはまだ未定だぞ。
とりあえず来いっていうから…歌ってくる。」


  ビオンは遠くに行っちゃうんだ…。

複雑な気持ちだった。


「よかったね。おめでとう。」

「どーも。」

今度はビオンが目を合わせない。


  ビオンがいなくなる……。
それは何とも言えない喪失感だった。
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