夫婦ごっこ
「主人からは…別に…
ただ社宅の奥さんたちが噂してたから…。
前さんが取引先の人と噂になってるって…。
主人は千鶴さんをどうしてもほっとけないみたい。」

「ほっとけないか……。」

私は会話を広げたくてかまをかけてみる。

「大学時代の友人だから…。」

私の言葉に前さんが フフと鼻で笑った。

「千鶴がどういう気持ちなのか…わからない。
俺のこと残酷とか言うけど…
一番残酷なのは千鶴の方で…。
俺はいつでも千鶴と大浦の
二人だけの間に嫉妬してきた。
同期入社して めきめきと頭角を現す大浦は 同期の中でも
扱いが違って行くし……。
そんな時 千鶴から恋人の相談を受け始めて…
俺は…千鶴にどんどん魅かれて行った。
千鶴が恋人と別れて 俺のプロポーズを受けて一緒に
旭川について行くって言ってくれた時
ホントに嬉しかったんだ。」

「彼氏にはずっと
待たされっぱなしで…もう疲れちゃった
ともちんはずっとそばにいてくれるよねって千鶴は言った。
恋人が誰だったのかはその時は知らなかった。
まさか大浦だったなんて想像もできなくて
どっちにしても大浦は俺のことバカにしてたし…
部も違うから話すこともなかったけど……。
結婚式の時・・・二人が見つめ合ってるのを
偶然に見て胸騒ぎがした。だけど…それは
思い違いだって言い聞かせたんだ。」



前さんはそう言うとタバコに火をつけた。
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