夫婦ごっこ
「今回また転勤で 大浦と同じ部になって…
バカになったふりして…嫉妬を必死に隠してきた。
社宅の隣に大浦が越してきたけど…
大浦も結婚したんだしって…安心してたんだ。
だけど……
大浦の結婚式の時に大学時代の女友達と
千鶴が会話してるのを…偶然聞いて 二人が恋人同士で
長く付き合っていたこと…結婚するのは二人だと
周りは思ってた事…俺の胸騒ぎは正解だった事を知って
耐えられなくなった。」



前さんの顔が歪んだ。

「今回のことだって…その子が
あんまり千鶴にかぶってほっとけなくなった。
千鶴が泣いて俺に恋人のこと話す姿に
重なって…本当にただ…相談に乗ってただけで…
それだけだった。
だけどそのたびに大浦が出てくるのが
ムカついた。千鶴がアイツを頼っているのが…
腹が立ってどうしようもなかったんだ。
だから…千鶴を少しこらしめようと…それだけだった。」


「まさか…まさかさ…
自殺するなんて…思ってもなくて…
正直 今 千鶴の気持ちがわからない……。
俺に失望して自殺したのか……
大浦と一緒になれなくて自殺したのか……。
千鶴の言う事 信じられなくなってるんだよね俺。」


私の頭もごちゃごちゃしている。

「ごめんね。奥さん……俺 今とんでもないこと
喋ってるね。別に大浦と千鶴に何かあるとは
思わないんだ。ただ…二人が重なる一瞬の空気は
誰もよせつけない…そんな気がして……。
被害妄想かな…。俺もちょっと参ってる……。」


いつも明るい前さんの顔が
別人のようになっていた。


「話さなきゃ…ダメですよ。
心の中全部……。お互い……わかり合わないと……
難しいけど……私は…恒くんを愛してるから……
失いたくないんです…。」

  失いたくない……。
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