夫婦ごっこ
「おまえといろいろ話して…自分がいろんな想いを
もつことができたよ。」

「え?」

「ほら俺…あんま恋の経験度が浅いって言ったろ。
おまえと会ってから…マジいろんな想いを経験した。
最初は友達って…思ったけど おまえが俺の歌
真剣に聞いてくれたり 涙を流したりしてたら…
俺の中で…ああこれが…切なさだったり 楽しさだったり
嫉妬心や 独占欲 自己嫌悪……
すげー急速に心が成長していった。」

「ごめんなさい。
私…そんなことも考えずに ビオンといる
心地よさに甘えて…利用してた…。」

「謝んなって…。俺にとってはいいことだったって…。
紅波を想って作る曲は 今までの俺の耳年増的な
広がらない歌の幅をやっと広げてくれた気がする。今まで
自分以外を大切になんて気持ちだって知らなくて
恋の歌は…上手く書けなかった。
今回 送った曲はそんな想いの中で作ったんだ。
事務所の担当者から…こういう曲が聞きたかったって…
そう言ってもらえた。」

「そうなの?」

ビオンの曲が通ってデビューが決まったと
ミミちゃんが言っていた。


「だから俺を利用したなんて思うなよ。
俺だってもしかしたら紅波を利用して…
デビューするんだからさ。」

「ビオンは…優しいね…。
本当に…優しすぎるくらいだよ…。」

「これからもしかしたらおまえを助けてやれないかも
しれないけど…一人で大丈夫か?」

「うん…大丈夫…。
ビオンの歌…聞くから…CD買って。」

「売上に貢献してくれてありがと。」

ビオンのキレイな顔が私を見て微笑んだ。

「きっときっと…その笑顔とその甘い歌声に…
魅了される人がたくさんいるよ。」

私たちは見つめ合って 握手を交わした。
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