夫婦ごっこ

勇気

ビオンと別れて　買い物を済ませて
家に戻るともう恒くんは
夕刊を開いて読んでいた。

「今日は…早かったんだ。」

思わずビックリしてそう話しかけた。

「うん…直帰してきた。」

相変わらず新聞とにらめっこ。
機嫌の悪さは感じとられる。

「千鶴さん…どうしてるの？思ったより
入院が長引いてるようだけど。」

「前がいるから行ってない。」

だから機嫌が悪いのか…？

前さんが三日くらいと言っていたけど
一週間たっても退院してこなかった。

「前…今回のことで飛ばされることになるらしい。」

「転勤しちゃうの？」

「仕方ないよ。自業自得。」

　　わかってないな…きみだって悪いんだ

「どうするんだろうね。」

わざとに言ってみる。

「行くしかないだろ。
会社の人事は絶対だし……あいつのおかげで
こっちは大変だったし…
正直課でも浮いてるから…
あいつも違うとこ行った方が
やりやすいかも知れないな。」


社会って厳しい……。ただ相談に乗ってただけで
結局　信じてもらえなかったってことか。


　　千鶴さんはどうするんだろ。