夫婦ごっこ
私は千鶴さんの病院の前に立っていた。

恒くんになんて言うのか…
どう想っているのかをどうしても聞きたくて

悩んだ末 勇気を出して
千鶴さんの病室に行った。

千鶴さんは 産婦人科病棟に移されていた。
病室には 千鶴さんだけで
私を見て驚いて体を起こした。

「無理しないでください。」

慌てて駆け寄る。

「紅波さん ごめんなさい。私のわがままのせいで
紅波さんにもイヤな思いさせて……本当にごめんね。」

素顔の千鶴さんも 悔しいけどきれいだった。

「急にお腹が痛くなって出血して…妊娠がわかったの。
切迫早産で24時間点滴になっちゃった。
罰があたったのね。わがままなことしてたから。」

「恒くんとのことは知ってます。
今日きっと来ると思います。」

「大浦くんをすっかり振りまわしちゃった。
紅波さんには申し訳ないけど…四年間のかり全部
返した感じ…。彼にはずっとずっと泣かされてて
何度も別れを告げても…彼に抱きしめられると
忘れちゃう…そして裏切られちゃうって四年間だった。」

「正直 大学時代の恒くんは
中学生だった私から見ても 最強チャラ男だったから。
わかります。女なんて~~みたいな。」

「けっこうモテるから…苦労したの。
今はすっかり仕事真面目人間になったけど
入社して大浦くんは仕事に夢中になって 次は私
仕事にやきもちをやき続けてきた……。
そんな時 同期だったともちんと出会ったの。」

千鶴さんはそう言うと目を閉じた。
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