夫婦ごっこ
恒くんに秘密が増えて どんどんぎくしゃくしてきた。
パートのことも…ビオンとどこで知り合ったのかさえ
きちんと答えられない。

そしてビオンとの間にあることも
いくら 恒くんは私を愛してなくても
話しづらいことだった。


お互い知らなくていい事

恒くんの場合は知ってしまったけど……。

出かけようと駐輪場から自転車を出していると
前さんが車に乗ろうとしていた。


「おはようございます。今日は休みですか?」

「おはよう。うん。今日千鶴が退院してくるんだ。
迷惑かけてごめんね。」

「落ち着いたんですか?」

「うん。出血も止まって赤ん坊の心臓も見えたから…
ホッとしたよ。」

「よかった。」

「赤ん坊がさ 俺らをまた繋いでくれた気がするよ。
お互いに…素直にまっさらになって…やり直すよ。
夫婦としてそして親として…。
紅波ちゃんを巻き込んでホント悪かったな。
大浦とはうまくやってる?」

「う~~ん。やってるとかやってないとか…。
うちらは何も変わらないから…。
前さんのとこみたいに…そうやって話ししたり
誓いあったり…そういうことは ないんです。
変わらない…毎日が…関係も……。」

「それだけ信頼し合ってるってことだろ?」

「そういうことにしときましょうか。」

なんだかむなしかった。
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