夫婦ごっこ

「好き…大好き…おねえちゃんには
絶対に秘密にするから……桃のこと……。」

その先を見るのが恐ろしくて
ふらつく足でベットに戻った。


「好きになってもらえるのは　うれしいな。
俺みたいなのでも…愛されてるんだって……。」


　　やだ・・・恒くん・・・・。

「好き　好き・・・・もうすごく好き・・・。」

桃音の甘い声がとてもやらしかった。

「ありがと。シャワー入っておいで。」

恒くんも優しい声で言った。


　　まさか…まさか…

ここに妻がいるのに……そんな……

「はい。」桃音の声が震えている。

しばらくしてシャワーのボイラーの音がした。


　　私だって…大好きなんだよ……

胸が潰れそうだった。

しばらくして桃音が出てきて
「ベットに行ってるから。」と言った。


「おやすみ。」恒くんの声がした。

桃音はきっとこのまま私の目を盗んで
恒くんを盗んじゃう。
それを聞くのは　　


絶対にやだった。

シャワーの音がした。
出てきた恒くんが　桃音のベットに入るのを
想像したら泣けてきた。


私は静かに立ち上がって
洋服に着替えた。


もう終わりじゃん…絶望感が襲う。
逃げ出すことを知られたくなかったから
そっと家を出る。

これから起こることを
もう受け止めるのは無理だった。
泣きながら…外をさまよった。