夫婦ごっこ
ビオンがいたコンビニにはもう違う人がいる。

窓の貼り紙に足を止めた。

この間終わったビオンのライブの宣伝だった。
私はしばらくその貼り紙の前で立ちつくしていた。


  この紙になら…甘えてもいいよね。

私はこぼれる涙を何度も何度もゴシゴシ拭いた。


「悲しいよ……。」


「どうしたらいい?教えてよ…ビオン……。」


「う・・・・うっ・・・・。」


しゃがみこんで 私は声をあげて泣いた。


「会いたいよ…。ビオンの歌が聞きたいよ…。」


ビオンがここにいなくてよかった。
もしここにいたら


私はまたビオンに抱きついて…泣くんだ。


そしてビオンを混乱させる
ビオンは 千鶴さんに振りまわされる恒くんのようになって


私は千鶴さんと同じ

愛してる人は一人なのに その愛がうまくいかないたびに
自分を愛してくれている人を利用する。


でもここにビオンはいない。


私はかろうじて悪人にならずに済んだ。

桃音が帰ったら
恒くんと…ちゃんと話そう…。
< 228 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop