夫婦ごっこ
「前さん転勤決まったんだね。」

帰って来た恒くんに声をかけた。

「うん。」

「幸せそうに笑ってたわ二人。
ずいぶん振りまわされたけど あの笑顔に
お幸せにって言うしかなかったよ。」

「そっか。それはよかった。
千鶴が幸せならそれが一番だ。
前もここにいていろいろ言われるより
新天地でやり直した方がいい。」

恒くんのスーツを受け取ってハンガーにかける。


恒くんのコロンの香り好きだな。

スーツに唇を寄せた。
なんか最近私……おかしなことする…。

苦笑い・・・・・。


シャワーから出てきて 缶ビールを開けながら
テレビをつけた。


「あ・・・・・・。」恒くんが声をあげたから
私もテレビを見る。


ビオンのCDの宣伝をしていた。

思わずテレビにかじりつく。

  ビオン…とうとうだね……。

悲しくなればすぐにビオンを求めるクセ……
もう治すからね。

ビオンの優しい歌声に目を閉じる。
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