夫婦ごっこ
「辛い思いさせて悪かったな。
もっと自由に付き合いたかったんだろ?
早く言ってくれればよかったんだよ。
俺からは…言いづらかったから…知らない振りしてたけど。」

「好きって…いや大切な存在だったの。
悲しい時いつもそばにいてくれたの。」

「ごめんな。あの時俺がちゃんと言ってやればよかったのに。」

「あの時って?」

「抱き合ってただろ?
月がきれいな夜だったな。月明かりに照らされて抱き合ってるの見たんだ。」

その日まで記憶を慌てて巻き戻した。

恒くんがDVDを借りてきて
何か私に言ったんだっけ。

でも私はあの時ちゃんと答えられなかった。
時間制限でアウトになって


後味悪かったのを思い出した。


「この間 桃が来た時 探しに追ったんだ。
コンビニでコーヒー買おうとしてたら
紅波が窓のとこで泣いていた。
ごめんな。悲しいおもいさせて。」



  違うよ


恒くんは大きな勘違いをしている。


「そうじゃなくて……。」


言いかけた時携帯が鳴って 答えることが
できなかった。


「……とれた?…やったじゃん」


電話は仕事場からだった。
恒くんは立ちあがって 部屋に戻って行った。
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