夫婦ごっこ
そう決意したけれど 恒くんが忙しくなって
なかなか言い出すきっかけが見つからなくなった。


大きな仕事が決まりそうだと
なんとなく電話の会話でそう読めた。

今は私のことなんかより 仕事の方が大切な時なんだろう。


きっと時間はあるってそう思っていた。


それにしても恒くんの帰りはもう
夜も遅くなってからで

携帯には


『夕飯いらない。先に寝てて。』

そうそっけないメールが毎日届いていた。

パート代もずいぶんたまってきて
貯金通帳を見るのがうれしくなっていた。

恒くんにもそろそろこのこと…
話さなきゃいけないなって…


秘密を重ねすぎて いろんなことを隠していくうちに
私自身こんがらかってきて

何から説明したらいいんだろう


そう思っていた。


チラチラと雪も降りだしていたある日のこと

店にビオンがやってきた。


ひさしぶりの再会だった。
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