夫婦ごっこ
本番スタート
引越しの朝まで別に何もしなかった。
普通どおり朝起きて 前の日は自分の持ってきた
荷物だけをスーツケースに片づけただけで

「これで大丈夫なの?」

いつものように朝のコーヒー
恒くんは朝食をとらない。

「うん。」
新聞から目を離さないで返事した。


  ふ~~ん…

9時を過ぎたら業者がやってきて
ダダダ~~~って片づけ出した。


  うわ~手早い……

どんどん箱にしまわれて行く。
私はその様子に目を奪われてても
恒くんは


ひたすらパソコン
携帯片手に仕事の話……

  そんなに仕事好きなのか~~

  すっかりつまんない男になっちゃって


二時間後 部屋には何もなくなった。

「それじゃあ 昼食とって一時半に
引越始めます。」

そう言って業者は出発した。

恒くんは空っぽになった部屋を
見渡した。

「お世話になりました。」

ポスターをはがして出て来た
茶色いシミを指でなぞって

いつまでもそこから動かなかった。
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