夫婦ごっこ
私は顔を覆ってる恒くんの手に 自分の手を伸ばした。

「また会えてよかった……。」

私が言うと恒くんは何度もうなづいた。

しばらくして恒くんが

「ビオン来てくれたね。」といった。

「うん。怒られたよ 心配させてって……。」

「いい男だね。テレビでみるよりずっといい男だった。」

「ああ見えて すごく男らしいんだよ。」

「そっか。」


恒くんが笑った。


「うん ほんといい男だ。」


  そういえば…私と恒くんの間には
  誤解があるんだった……。

  まだ…誤解したままなのかな。


「恒く・・・・・」私が言いかけた時だった。


「紅波ちゃん!!」

病室の中に飛び込んできたのは 恒くんの母親だった。


「よかった よかったね。」

私に飛びついてきて喜んでくれた。


「恒 先生が呼んでるわよ。」

「あ ちょっと行ってくる。」

恒くんが私の頭をポンポンと叩いて病室を出て行った。


  ・・・話があるんだよ・・・・



義母の元気な声にかき消されていく。

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