夫婦ごっこ
また夢を見ている。


恒くんを探してる夢
名前を呼んでも 退院して帰った部屋に恒くんはいない。


独りぼっちになった私は 泣いて泣いて……



「紅・・・・・。」

揺り起こされた。


目を開けるとママの顔があった。

「うなされてたよ。」

「ありがとう なんかいやな夢を見ちゃって……。」

「起こしてよかったんだ。」

「うん。」

「リンゴ食べる?紅波 好きでしょ?
さっきパパが買ってきてくれたのよ。」

優しいママの顔。

こんな顔 初めて見たかも……。

「ママ 恒くんは?」

「今日から仕事に戻ったのよ。
戻っていいからって言ったの。あんたの事故からずっと
休んでて…なんか仕事大変な時だったみたいね。
電話で何度も謝ってたってパパが心配してたのよ。
だからもう紅波は落ち着いてるからって仕事行ってもらったわ。」


「また…迷惑かけちゃった…。
恒くん…今 お仕事大変な時なのに……。」


私は恒くんの足ばかり引っ張っている。


妻失格……そう思った。
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