夫婦ごっこ
疲れた顔で恒くんが 面会ぎりぎりに飛び込んできた。

「いいのに…無理しないで…。」

「顔見ないとさ なんか安心できなくて。」

元気な振りをして笑う恒くんがいる。

「お仕事大変な時に ごめんなさい。」

「何言ってんだよ。今 俺は仕事より紅波のほうが大事だから。」


たぶん元気な時だったらすごくうれしい言葉だった。


でも今その言葉を聞くと
なぜだか 申し訳ない気持ちになる。


「仕事大丈夫だった?」

「うん。大丈夫だから心配するな。
早く体 よくして元気になれ。」

恒くんの指が私の額をはじいた。


「本当にごめんなさい。
私 恒くんの足引っ張ってばっかだね。
契約には 夫を支えるはずだったのに……。
私は ダメな妻だね……。」

そういうと辛くなってきて涙があふれる。

「紅波・・・・・。」


「ずっとずっと恒くんを……支えてるんじゃなくて…
突き落としてる気がするの…。
私……失格だね……全然恒くんの奥さん できてない…
こんな体で…家のことも何もできない……
ごめんね…ごめんね……全部私のせいだ……。」


夢見も悪かったせいか私は混乱していた。


「なことないから……。」
恒くんは疲れてるのに 私を力つけてくれる。


  もう限界だ……。
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