夫婦ごっこ
無事に飛行機を降りて

「これから…新婚旅行ごっこをします。」と言った。

「ん?」恒くんが私を見つめた。

本当はすっごく恥ずかしかったけど 南国の温かい風が私に
勇気をくれた。

「手…つないでいい?」

恒くんは一瞬驚いていたけど
私の手をとってくれた。

「旅行が終わるまで 手つないでね。」

「了解~~。」

見た目 若いカップルが沖縄に旅行に来たっていう
幸せ野郎たちにしか見えないだろう。
私たちに 別れが迫ってるなんて
誰にも気づかれないように

そして自分が忘れられるように……
ここではたくさん恒くんに甘えよう。


後悔したくない。
恒くんを体でも心でも……たくさん感じたい。

握った手が……心を通わせてくれる…。

空港の外では観光タクシーが待っていた。

「大浦さまですね。」

結局ツアーだとバタバタするからタクシーで観光しようって
その方が時間も有効に使えるからって
そのお金は私のパート代から払った。

大正解。

ホテルに戻ってくるまで充実した時間を過ごした。
美しい風景もたくさん見て 感動して
最高な気持ちは 悲しい別れをしばらく
忘れさせてくれた。

美しい海 青い空 白い雲 色とりどりの花に
風に揺らぐヤシの木……

愛する人と見る最高の風景だった。
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