夫婦ごっこ
緊迫した時間だけが流れて行く。

恒くんは真暗な窓を黙って見つめていて……そこに写る
険しい顔に私は震えあがっていた。

「ごめんなさい。」

何度言ったかな ずっとムシしてる。


「シャワーして来い。」かなり怒ってる声にビクついた。

「はい。」

髪の毛を洗うと砂が落ちてくる。


  あいつらほんとに…する気だったのかな

だったら今頃私は ボロボロになっていた。
今さら恐怖がこみあげてきて 私はお風呂の中で大泣きした。


  あいつらに…奪われなくてよかった……。


しばらく泣いてバスタオルを巻いて
部屋に戻ると ドレッサーの前に恒くんがいて

「おいで。」と言った。

言われる通りに そこに座ると
ドライヤーをかけてくれた。


何も言わないで……私は鏡越しに目が合うのも怖くて
盗み見しては目をそらす。


「紅波……。」緊張した。

「はい。」

「何もなくて…よかったな。」恒くんの声が最後が消えた。

  恒くん?

「また 俺 おまえを傷つけたって…思った。
この間の事故で懲りたのに……また……
そう思うと俺はもう…死にたくなった。」

  傷つけるのはいつも私の方だよ。
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