夫婦ごっこ
「ごめなさい。」

恒くんが泣いてるように見えて目をあげられない。

「よかった…そんな奴らにけがされなくて……。
ケガしてないのか?」

「一本とられて倒されて…胸をわしづかみにされた。」


恒くんが私の髪の毛を手にとってキスをした。

「腹立つな……。」
 


  ね……そのキスはどういう意味?


恒くんはひざをついて後から私を包み込むように抱きしめた。
恒くんの顔が私のすぐ隣にあって
恐る恐る鏡を見ると 目があった。


「おまえをまた…傷つけてしまったね。
怖い思いさせて……ごめん。」

私は首を静かに横に降った。


「私がおかしなことお願いしたから悪いの。
恥ずかしい…嫌いにならないで……。」


「嫌いになんかならないよ。旅行が終わるまで
俺の奥さんなんだからさ………。」


「よかった……。うちが淫乱だって思わないで……。」


「思わないよ。ただ…意地悪だなって思った。」

「意地悪って?」


「俺は男だから……。理性を保つのに必死なんだ。」


恒くんの目が妖しく見えてきた。
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