夫婦ごっこ
契約解除
美しい沖縄の景色に別れを告げて 飛行機は離陸した。
恒くんは緊張する私の手をしっかり 握ってくれた。
不思議なことに行きよりも
落ち着いていられるのは恒くんと過ごす時間が
愛おしくてたまらないから……。


「夢みたいだったね。」

「夢か……。」

「そう夢だったんだよね。」

「いい夢見れてよかったな。」


  本当だね恒くん……。

現実が待っている……。
これからどうしようか 考えないと……。
一人で生きて行かないといけないんだ。

高校もちゃんと出てないし……

今さら後悔したって遅いけど・・・
ちゃんと出ておけばよかったな。


千歳空港を出ると 寒かった。

「うわ…まだこっちは春が遠いな。」

現実に引き戻されてしまって私たちは
帰りの車の中
無言の時間が続いた。



恒くんもきっと同じこと考えてる。


夢から覚めてしまって…心が寒くなってない?
もう抱きしめ合って温め合うこともできなくなったんだね。
< 303 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop